経営コンサル社長の二枚舌!経営セミナーで「残業代払え」と力説しておいて、自社では残業代もなく「24時間働け」

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今回登場する会社は、東京・神奈川を中心に経営コンサルティング業を営む株式会社である。ここで働いていた労働者のS氏からの相談を受けたのは、もう4年前のことである。S氏の相談は、未払いの残業代があるのではないかというもので、ごく一般的な未払残業代請求の事件として受任するのではないかと思いながら話を伺った。

 S氏の担当業務は、医療機関コンサルティング業務で、近隣の医院のホームページの調査やSEO対策などの顧客分析、パンフレット作成、経営セミナーの準備等を行っていた。いずれの業務も、事前の調査や資料作成など、多くの時間を要するものばかりであり、会社の所定労働時間(契約で定められた通常の労働時間のこと。)である8時間では到底終わる量ではなかった。

その上、研修として毎週4~5冊の指定書籍を読み込み(会社が提出してきた資料によると、指定書籍を読むに当たっての最低所要時間というものがあって、それだけでも20~35時間となっていて、週の法定労働時間(労働基準法で定められた労働時間の上限/週40時間)の大半を消化してしまう。)、感想文を提出のうえ、試験をクリアすることが求められていた。

 そして、労働時間に関する、社長からの指示内容を、社内研修の講話や業務報告に対するコメントで見ることができたのだが、そこには、「人の3倍の仕事量に取り組むこと」「1週間120時間働くこと」という指示があった。

 ?? これだけでは、言っている意味が直ぐには分からない……。

 そこで、この指示の内容が、一体どういう意味なのか考えてみたい。

 会社には、就業規則があり、そこには「土曜日、日曜日が休日」と規定されていることから、S氏の勤務は月曜日~金曜日の週5日勤務であることがわかる。月曜日~金曜日の5日間が全部で何時間かというと、24時間(月)+24時間(火)+ 24時間(水)+24時間(木)+24時間(金)=120時間である。つまり、毎日24時間働けと言っていたわけである。そして、会社の1日の所定労働時間は8時間とされており、「3倍の仕事量」をかけ算として考えれば、これもまた24時間となり、社長の2つの指示は整合している。

 ちなみに、記述のとおり、労働基準法では、特別な手続を経ない限り、1日8時間、週40時間を超えて働かせてはいけないとされている。

 昭和の終わりから平成の初め頃に、テレビCMで「24時間たたかーえますか? ビジネスマーン♪ ビジネスマーン♪」と宣伝していたのをうっかり思い出してしまうのは私だけだろうか。正に狂気の沙汰である。

 S氏は、それでも社長の期待に応えるべく一生懸命仕事を頑張り、約5カ月間、懸命に働いた。S氏が保管していた業務日誌に記載されていた始業・終業時間をもとに、S氏の残業時間を計算すると、なんと毎月200時間超。過労死ラインの倍以上の労働時間である。

 これによって、S氏は体調を崩して退職するにいたり、私のところに相談に来た次第である。個人的な感想を言えば、労災事件に発展する前に辞めることができて、そして何よりも命が助かって良かったというレベルである。

自分は社員に残業代払わず、経営セミナーで「残業代払え」と力説する二枚舌社長
 会社は、これだけ仕事をしろと言っているのだから、それなりの残業代は支払っているのだろうと思いきや、「指示した仕事は、全て所定労働時間で終わる仕事なので、残りの時間は自主的な研修とでも言いましょうか……だから残業ではない」とのことで、未払の残業代など1円たりとも発生してないとのことであった。これを労働基準監督署にも説明しているのだから筋金入りである。

 一方で、社長が主催する経営セミナーでは、「労働者に対し、残業代を支払わないという経営はあり得ない」と力説しているから素晴らしい。つまり、完全に二枚舌であり、俗に言う確信犯である。対外的にはあり得ない経営として紹介していることを、自らの会社では、平然と実行しているのである。

 訴訟では、会社に弁護士がついたが、さすがに「人の3倍働け!」、「週120時間働け!」と指示したとは言えなかったのだろう。「それくらいの気概をもって取り組んでほしいという叱咤激励」に過ぎないと苦しい説明に追われていた。そして、①毎週、感想文の提出や試験を課されていた研修は、「本人が自主的にやっていたことだから、労働時間ではない。」と主張し、②業務日誌に記載されている始業・就業の時間は労働時間ではなく(記載を求めていなかったので知らない。でも訂正もしていない。)、③残業代についても、職能手当という手当が残業代だから未払いはない(でも、就業規則には、「職能に対する対価として支給する」と書いてある。)、と主張した。

 裁判所も、会社の主張を採用する様子は見られず、弁護士と同行していた会社担当者に、質問を浴びせていた。例えば以下のとおりである(不正確な点も多いと思われるがご容赦いただきたい。)。

 裁判所 日誌に書かれている時間が勤務時間ではないとすると、会社は何をもとに労働時間を把握していたの?
 担当者 ……
 裁判所 原告さんの仕事はどんな内容?
 担当者 会議以外はすべて研修・勉強ですので……
 裁判所 勉強っていっても指示しているんでしょ。
 担当者 予定時間内で終わるものですから……
 裁判所 かかる時間に個人差があるでしょ
 担当者 一般的には終わりますから……

 実質2回目の期日からは、残業代をいくら支払うのかという方向で話が進んでいった。詳しい内容は公表できないが、それなりの水準で和解した。S氏は、退職後もコンサル業界に身を置いているようであるが、元気にしているだろうか。一方で、会社はHPを見る限り、現存している。次なる犠牲者がでないことを祈るばかりである。

 

引用元

lite-ra.com

 

どこからがブラックに入るんですかね・・・