サムスン副会長「経営復帰」で何が起きるのか

http://image.news.livedoor.com/newsimage/stf/2/2/221a3_1635_7606ec771d6d40c0b0856b885f4d369e.jpg

2016年秋に疑惑が取りざたされ、結果、現職大統領の朴槿恵(パク・クネ)氏が弾劾・罷免された韓国の国政不正介入事件。この事件の首謀者とされ、朴前大統領の友人である崔順実(チェ・スンシル)氏に巨額の賄賂を贈った容疑で逮捕されたのが、サムスン電子の李在鎔(イ・ジェヨン)副会長(50)である。

 

当記事は「ソウル新聞」掲載記事の日本語訳です(一部、理解を助けるための加筆をしています)

 

李副会長は一審で懲役5年の実刑判決を受け服役していたが、ソウル高等裁判所は2月5日、同氏に対し懲役2年6カ月、執行猶予4年の判決を出した。この判決により、李副会長はほぼ1年ぶりに釈放された。

ソウル高裁は同日、李副会長以外にもサムスングループの元・現職役員5人に判決を言い渡した。一審で実刑を受けたサムスングループ未来戦略室の崔志成(チェ・ジソン)元室長(67)、張忠基(チャン・チュンギ)元同室次長(64)などにも懲役2年、執行猶予3年などの判決を言い渡した。

一審での有罪認定の大部分が二審で無罪に
控訴審で最大の争点となった賄賂供与について、崔順実氏の娘に対する乗馬競技への支援の一部に対する容疑のみを認め、その他崔順実氏がかかわる財団への資金提供については無罪となった。同時に、特定経済犯罪加重処罰法上による横領と財産の国外逃避、犯罪収益隠匿処罰法違反などはすべて一部が有罪、あるいは無罪と判断され、李副会長の罪が軽減された。

ソウル高裁は「この事件は国内最高の政治権力者である朴前大統領が国内最大の企業集団であるサムスンを脅迫し、崔順実氏の行き過ぎた母性愛の下で私益を追求、被告人が彼らの要求を拒否できないまま賄賂を提供した事件」と規定した。一審での「政治権力と資本権力の不道徳な密着であり、政経癒着の典型」との判断は完全に覆されたことになる。

ソウル高裁は特に、一審で朴前大統領と李副会長との贈収賄の根拠としていた「包括的な懸案(李副会長が父でサムスン電子会長の李健熙(イ・ゴンヒ)会長からの経営を継承する全般的な問題)」に対する「暗黙の請託」はなかったと強調した。

個別の懸案はもちろん、李副会長の経営権承継もまた請託はなかったと見るよりは、「政治権力の要求に受動的に応じた賄賂供与」がなされたと高裁は判断した。

李副会長はこの日、ソウル拘置所から釈放された。「みなさんによい姿を見せることができず、この点を改めて申し訳なく思う。1年間、自分自身を振り返る貴重な時間となった。今後、より注意深く自分を振り返り努力していく」と述べた。李副会長は釈放後、李健熙会長が入院中の病院に向かった。

一方、検察側は「裁判所が正義を見せてくれると思っていたが非常に残念。裁判所と見解が違う部分は上告し、徹底して争う」と明らかにした。

李副会長が釈放され、サムスングループは1年近く続いた経営の空白を解消し、グローバル的な投資の拡大、海外ネットワークの回復を急ぐものと思われる。李副会長が経営活動を当面自粛することになっても、グループレベルでの信頼回復と「第三の創業」に資する将来の青写真を出すのではないかとの観測もある。

サムスンが大型投資やM&A実施の可能性
サムスングループ関係者は5日、「釈放されたことで経営の不確実性が解消される。リーダーシップの空白が解消されることで国内外からの憂慮が払拭され、2017年にはほとんどなされなかった大型投資やM&Aなど、成長エンジンの確保を急ぐだろう」と期待感を示した。

李副会長は出所後、すぐに入院中の李健熙会長を見舞った。李会長は4年前に心筋梗塞で入院したまま。李副会長は出所直後、記者の質問に「いま父親にあいさつをしなければならない」と述べながら、車に乗り込んだ。少しほほ笑んだ後、世論を意識したかのように、すぐに表情を引き締めた。病院に向かう前に、「法の上にカネがあるという指摘があるが」との記者の質問に対し、李副会長は沈黙で答えた。李副会長は父親と会った後、そのままソウル市内の自宅に戻った。

今回の判決に否定的な世論を意識して、李副会長は当分、自らの行動に注意するものと思われる。2月9日の平昌冬季五輪開会式に出席する可能性も取りざたされているが、現段階ではその可能性はほぼないというのがサムスン側の説明だ。

対外的な行事を通じて、李副会長は「第三の創業」を宣言する青写真を示すのではないかとの観測もある。2月12日にはグループ創業者の故・李秉竽(イ・ビョンチョル)会長の誕生日だ。3月はグループの前身となる三星商会設立80周年を迎え、また李健熙会長が「第二の創業」を宣言しグローバルサムスンを誕生させて30年を迎える月であるためだ。

韓国財界は経営復帰に好意的
また、李副会長が経営スタイルの変化を、注意深く探る可能性もある。2月23日の株主総会で初めてとなる株式分割を行い、李副会長がトップに依存する経営構造を株主と取締役会中心の経営へ全面的に刷新する可能性も高い。サムスン電子の場合、2~3人の社外取締役を外国人CEO(最高経営責任者)出身へ交替させるなど、取締役会の多様性を大幅に強化するとの観測もある。

サムスンによる投資と雇用の拡大も行われるだろう。サムスン電子は昨年、自動車向け電子装備企業であるハーマン社を買収して以降、これといったM&Aを行っていない。半導体が好況であるがゆえに、将来のキャッシュカウに対する備えが足りないのも実情だ。

李副会長の手足が縛られている間、ボアオ・アジア・フォーラムなど海外イベント出席による海外ネットワークづくりもまた十分ではなかった。政府の政策に呼応した大規模投資と、それによる雇用拡大も期待される。

財界は「今回の判決は経済全般に好材料となるだろう」という前向きな反応を見せている。李副会長の弁護団は「重要な控訴事実に対し無罪判決を出した裁判所の勇気と賢明な判断に心から敬意を示す」と発表した。一方、2月5日のサムスン電子の株価は一時3.56%下落したものの、判決が出たあとは前日より1万1000ウォン(約1000円)高となる239万6000ウォンで商いを終えた。

 

引用元

news.livedoor.com

 

今後に期待したい。