米国に続け!  KDDIが「スタートアップ企業」支援

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渋谷の高層ビルに、拠点「∞ラボ」

若者たちでにぎわう東京・渋谷の駅前に立つお洒落しゃれな高層ビル、渋谷ヒカリエ。その上層階に不思議な空間があった。「∞」(無限大)の形を模している天井の照明がひときわ目立つ。渋谷の街並みを眼下に見下ろす絶景のオフィスでは、始終、若者たちを中心にした様々なミーティングが行われている。そこが「KDDI∞ラボ(無限ラボ)」だ。

 KDDIは携帯電話のau事業を展開している通信会社だが、ベンチャー企業などの間で話題のインキュベーター(新興企業育成)プログラムとして、スタートアップ企業を支援する事業を行っている。その拠点こそが、∞ラボである。

 ネーミングもユニークなこの事業は2011年にスタートし、今年で8年目。すでに計58社が∞ラボの「卒業」を果たし、ビジネス界で羽ばたいている。現在は6社が支援を受けている。

 ∞ラボの支援の仕組みは、支援を受けたい企業のエントリーを受けて、KDDIの専門部署が可否を決める。支援の方法は様々で、企業の創業期、初期段階、中間期から安定期まで、その段階に応じて臨機応変に対応する。

 創業期であれば、経営支援からサービス開発、ビジネスモデルの実証実験や事業連携など、その企業が成長を果たすための支援に力点が置かれることが多い。その次の段階では、共同PRやビジネス開発、顧客開拓といった事業連携に移るのが主なパターンだ。さらに事業連携と並行して、一部では資金援助を行うケースもある。

 資金援助は、KDDIのファンドである「KDDIオープン・イノベーション・ファンド(KOIF)」から行う。運用総額は300億円。1社当たりの支援額は平均2~3億円で最大5億円程度だが、創業したばかりの若い企業にとっては、ありがたい金融支援に違いない。KOIFを通じた支援は「エクイティ出資」と呼ばれる形で、KDDIは被支援企業の株式取得などを通じて事業に加わる。だが、短期的な利益を得るのではなく、事業者と一体となって相互のビジネスにシナジー(相乗効果)を高める道を追求する。

ネットでギフト、衛星画像販売…多様な企業が奮闘中
 KOIFを通じて資金援助した企業は、∞ラボの支援企業以外も含めてこれまで48社に上る。うち4社は残念ながら経営に行き詰まったが、44社はさらなる成長をめざして奮闘中だ。創業した企業が事業を安定させて継続するのは非常に厳しい道のりであるだけに、「48分の44」という割合は、KDDIの目利きの成功率が高いと言えるだろう。

 KDDIで∞ラボを担当する専門部署のスタッフは約50人。このほか、アドバイザーとして人工知能(AI)研究を専門とする松尾豊・東大准教授をはじめ、知的財産に詳しい弁護士や事業経営者などが加わっている。注目したいのは、50人のチームの構成も、20~30代が7割だという点だ。支援する側も若い世代で、支援されるスタートアップ企業の側も若い世代。若者たちの斬新な発想とパワーにより、閉塞感が漂う日本の経済を刺激し、いずれは牽引けんいんするような企業に成長することが期待される。

 

 

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