再就職に壁、ならば起業 ヘアアクセEC成功

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結婚・出産が転機となる女性ビジネスパーソンは多い。リトルムーンインターナショナル(大阪市)の創業者、文美月氏もその一人だ。再就職先が見つからず、「ならば自分で自分を雇用しよう」とヘアアクセサリーの電子商取引(EC)サイトを2001年に立ち上げ、成長させた。EC黎明(れいめい)期からの先駆者にとどまらず、今も活動の幅を広げる。

「毎日をちょっとキレイに、ちょっと楽しく」。リトルムーンはこのコンセプトのもと、通販サイトで常時1万点のヘアアクセサリーを取り扱っている。国内外から仕入れた商品のほか、福井県鯖江市のべっ甲風素材を用いたコームなど、オリジナル商品も充実。累計の販売数は440万点を超え、年商5億円強の有力サイトとなっている。

 文氏は奈良県出身の在日コリアン3世だ。「何でも人の2倍頑張って普通だと思え」という厳格な父のもとで育った。高校ではバスケットボールで県の国体選手として活躍。引退後に猛勉強し、同志社大学の経済学部に進学した。

 「経済の中心で働きたい」と新卒で志望したのは金融業界だった。日本生命保険への就職活動では昼食がセッティングされ、「何でも食べて」という社員の言葉を額面通りに受け取り、ステーキを注文。実はそれは面接で、豪胆ぶりが評価され、同志社大から日本生命へは初の女性総合職として内定を得た。

 1993年に入社し、中小企業などを担当。3年目で東京に転勤した。ただ、平日は遅くまで働き、休日は授乳のために実家に帰省する先輩社員の姿をみて、今後のキャリアについて考えることも次第に増えていった。

 同時期にアイデンティティーについて意識するようになった。同僚から韓国の言葉や文化について聞かれても、ほとんど答えられない。これまで避けていた部分に向き合おうと退職し、26歳で初めて韓国に向かった。

 韓国では人生の転機が待っていた。現地で出会った同じ在日コリアンの男性とわずか10カ月ほどの交際でスピード結婚。共に日本に戻って2児をもうけた。

 専業主婦として4年ほど過ごし、再び社会に出て仕事をしようと思ったとき、壁にぶつかった。何社も面接を受けたが、育児中という環境も影響してか就職先が見つからない。「ならば自分で雇用を生み出そう」。子供との時間を多く作れるよう自宅での起業を考え、2001年にECサイトを立ち上げた。

 ただ、当初は試行錯誤の日々が続いた。経営の経験がなく、手本となるビジネスモデルもない。韓国から輸入した雑貨などを販売していたが、3カ月は売り上げがゼロ。納品書を手書きし、床にそのまま商品を置いて写真を撮るなど、当時は何もわからず無我夢中で取り組んでいた。初めて3980円の商品に注文が入った時の喜びは忘れられないという。

 挑戦と失敗を繰り返すうちに、いくつもの発見が出てくる。行き着いた先が「商品の種類を絞った方が、買い物がしやすいのではないか」という結論。サイズが小さいため配送や保管が簡単で、人気も高いヘアアクセサリーに特化し、サイト「リトルムーン」として04年に再出発すると、人気が高まり始めた。

 注力したのはファン作りだ。メールマガジンを定期的に配信し、読者からの質問メールには丁寧に返答。サイトには何枚もの写真を使って、ヘアスタイルのアレンジ方法を解説した。電車内でサイトのプリントアウトを手にした乗客を見かけた時は、「きちんと伝わっているんだ」と手応えを実感した。地道な努力が実を結び、ヘアアクセサリーの分野では国内最大級のサイトに育った。

 事業が軌道に乗ると、視野も広がってくる。06年には代表権を家族に譲り、新たなことを始める一定の時間を確保した。視線は社会的貢献に向き、10年からは日本で使われなくなったヘアアクセサリーを集め、ラオスカンボジアなど発展途上国の少女に贈る活動を始めた。これまで約2万点を回収、現地の子供たちへの奨学金の創出にもつなげている。

 友人からの誘いもあり、15年には食品などのロスを削減するビューティフルスマイル(大阪市)も設立した。現在は京都の一流メーカーの規格外のチョコレートを集め、売り上げの一部がカンボジアの子どもたちの教育支援に使われる仕組みを展開している。

 近日中に菓子メーカーなどとも新たな商品を販売する予定で事業は順調だが、決して現状に満足はしていない。「小さな成功が積み重なっている」とこれまでのキャリアを振り返る文氏。人の言動を気にして一歩を踏み出せないのはもったいない。「まずは自分で動いてみる」と、貪欲に学ぶ姿勢を忘れずに前を向く。  

 

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