コンサル企業、いまや本格的なエージェンシーの代替手段

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アクセンチュア(Accenture)によるメディア予算をめぐる駆け引きに対する業界の激しい反駁は、それが不完全な策略であることを示唆していた。しかし、懸念と激しい憤りの裏には、同コンサルティング企業がブランドに対する力を維持していることを物語っている。

1年前、アクセンチュアのようなコンサルティング企業は、多くのブランドにとってあまりにも遠すぎる存在と見なされていたが、現在、広告主のなかには、彼らこそ利用すべき妥当な手段かもしれないと考えるものもいる。ユニリーバ(Unilever)、BMW、マセラッティ(Maserati)、ラディソンホテル(Radisson Hotels)はみな、この期間にコンサルティング企業に接近している。たとえば、ラディソンは何か違うことを試みる必要にかられ、サービスとバイイング業務を業務提携先にアウトソースする一方で、データと技術は自社で所有することが可能になった。

 

アクセンチュアの策略
「我々のカスタマージャーニーをサードパーティーに任せることは、自社管理よりも費用がかかる。だから、その権限を自社に取り戻すために、我々はアクセンチュアインタラクティブAccenture Interactive)に目を向けた。予測モデルを使って何を提供してくれるのかを事前に教えてもらわないので、アクセンチュアマーケティング予算を一銭も出す予定はない」と、同ホテルチェーンのデジタル部門バイスプレジデントレミー・メルクス氏は語る。

 

コミッション制ではなく、フィー制による支払いで資金提供され、メディアアービトラージに依存しないモデルはすべてのエージェンシーが利用できるものではない。独自のメディアモデルを徹底的に見直すために、メルクス氏がアクセンチュアプログラマティックバイイングサービスを選んだのはそのためだ。5月に明らかになったアクセンチュアの広告枠取引参入は、コミッションモデルではなく、フィーモデルを、そしてマークアップするメディアが介在しないことを広告主に約束している。それにより、メルクス氏のようなマーケターたちに対してオンライン広告をより安全に見せることができ、アクセンチュアのもつ情報技術の専門知識と組み合わせることで、しばしばデータに隠されている洞察に彼らがアクセスできるようになるかもしれない。

エージェンシーたちはアクセンチュアの直近の策略に気をもんでいるに違いないと、ある業界団体のシニアエグゼクティブは述べる。顧客評価はこれまで以上に高く、ブランドはコストを削減できる分野、業績改善を推し進める分野を探しており、アクセンチュアはこの動きに先んじて戦略的に人材を配置していると、このエグゼクティブは指摘する。これにより、多くの広告主がエージェンシーとの付き合い方を見直している時期に、同コンサルティング会社に対し、さらに多くの広告主が目を向けるようになっていると、このエグゼクティブはいう。「現在の混乱した環境が、マーケターたちがコンサルタント会社に近づく機会をもたらしていることは間違いない。クライアントのニーズに対して適切なソリューションが何かということに関して、我々は岐路に立たされているのかもしれない」。

それは、いずれコンサルタント会社がエージェンシーに取って代わることを意味するのだろうか? それは、さほど簡単な話ではない。

「非現実的」に見えるモデル
アクセンチュアモデルの価値が明らかだとしても、拡大は難しい。メディアに基づいたパーセンテージフィーは、エージェンシーの実際の収入に関して「非現実的」な見方を与えていると、デジタルメディアコンサルティング会社であるデジタル・ディシジョンズ(Digital Decisions)のマネージングパートナーのルーベン・シュラーズ氏は述べた。したがって、適切な売り込みプロセスが整っていないなか、従来のエージェンシーは料金に関してアクセンチュアよりも非常に勝っているように「見える」かもしれない。「それゆえ、プログラマティックバイイング部門を効果的に拡大することは、適切なクライアント教育と、もう一方で、効率的な購買操作が求められる」と、シュラーズ氏は語った。

アクセンチュアと提携しているマーケターたちは、エージェンシー、監査人、ピッチ(売り込み)マネージャーに準じて、慎重に同社の矛盾を問わなければならない。メディアプラニングや戦略に関して、独立した立場でしっかりと助言できることと同時に、自社内での取引モデル運用を提供できる企業は存在しないと、アクセンチュアを批判する人々は主張している。エージェンシー、監査人、ピッチマネージャーを悩ます利害の対立を考慮すると、同コンサルティング会社に対する反発は、やや皮肉なことだ。匿名を条件に米DIGIDAYに話してくれたアドテク企業のエグゼクティブは、その偽善行為が不安を誘発するかもしれないと明らかにした。

「当社のクライアントではなくエージェンシーに勤める人々から聞いた主なフィードバックによると、アクセンチュアはそれを脅威として見ている」と、このエグゼクティブは語った。「なぜなら、エンゲージメントに対して、またリサーチに関していえば、結論の見せ方に対して、高度に体系化されたアプローチで、アクセンチュアはクライアントの受けが良いだろうからだ。これが彼らのプログラマティックバイイングの運営方法に役立つことの裏付けになるかもしれないし、ならないかもしれない。しかし、この発表を支持しない一部のエージェンシーにとって懸念材料であることは明らかだ」。

メディア企業が孕む危険
しかし、それはすべてがうわさ話というわけではない。これらの懸念のいくつかはしっかりした根拠がある。メディアバイイングへのアクセスを組み合わせたアクセンチュアのメディア監査業務のミックスは、最終的に彼らがメディア価格を設定できるようになることを意味している。アクセンチュアのエグゼクティブたちが、クライアントが何を購入し、バイイングのどこに需要があるのかを知っていれば、マージンを最大化するためにメディア価格を操作し、一方でメディアエージェンシーに比べて低コストのメディアオプションを彼らのクライアントに提供する可能性がある。これはメディアパブリッシャーにとって大きな危険を孕んでいる。

この矛盾する立場を考慮して、メディア測定企業エビクウィティー(Ebiquity)のチーフ・ストラテジー・オフィサーのクリスチアン・ポールマン氏は、同社は広告主、エージェンシー、およびその他のベンダーに対し、アクセンチュアと業務提携する際には、彼らのメディアデータ守秘義務を確認するようアドバイスしていると語った。その利害の対立を解消するため、アクセンチュアはメディア監査、アドバイザリー、コンプライアンス業務を「譲渡する、または、廃業する」必要があると、ポールマン氏は述べる。すべてのメディアアドバイザーがメディアサプライチェーンから完全に独立していることが、クライアントの利益を最優先することだ、とポールマン氏はいう。

しかし、現時点でアクセンチュアはそのような意思表示をしていない。事実、同社はいまのところメディア監査人およびバイヤーとして進み続けていくことを意図しているようにも見える。アクセンチュアプログラマティックバイイング部門は、メディア監査を行う会社とは別会社のアクセンチュアインタラクティブのなかにあると、アクセンチュアインタラクティブプログラマティック・サービスグローバル責任者のスコット・ティーマン氏は述べた。機密データと機密保持、ファイアウォール、ポリシーも整い、ティーマン氏によると、それらは「もっとも厳しい信頼水準をもって機密情報は確実に保持されるようにつねに準備されて」おり、「一般的に認められている業界標準」に準拠しているという。

さらに、事例証拠があり、アクセンチュアは、エージェンシーと同じようには利害の対立を見ていないことを示唆している。

魅力的な組み合わせ
「この申し出を拒否する、または、これらコンサルタントたちにエージェンシーの資金調達へアクセス権を認めないという多くのクライアントを私は抱えている」と、あるメディアコンサルタントは述べている。「エージェンシーは、特にこの問題に敏感で、まるで彼らは経営コンサルタントが直接の競合と見ているかのようだ。多くの広告主は、競合する顧客と業務提携をしているメディアエージェンシーを嫌う。しかし、コンサルティング会社は、部門全体に奉仕することを美徳にしている」。

通常、利便性と専門知識は、広告主が抱く可能性がある矛盾に対する懸念を押し切る。広告主は競合他社との利害の対立をより気にすると、マーケティングコンサルタント、トリニティP3(TrinityP3)の創設者でグローバルCEOを務めるダーレン・ウーリー氏は述べる。しかし、メディア監査に関しては、パフォーマンスメトリックを設定し、パフォーマンスを測定し、そのパフォーマンスを検証するメディアバイイングパフォーマンス取引をメディアエージェンシーが準備していた数年のあいだ、広告主は「これらの矛盾を無視し続けた」と、ウーリー氏は語った。

「私がエージェンシーのCEOだったら、自分の周りのチームを集め、できるだけ早く何かを試み、構築しようとするだろう」と、メディア経営コンサルタントIDコムズ(ID Comms)のチーフ・ストラテジー・オフィサー、トム・デンフォード氏は語った。「魅力的な組み合わせは、アクセンチュアのように、『より高い透明性の保証をともなうオフラインメディア』と『非オークションメディアを提供する機能』を組み合わせたものになる可能性が高い」。

 

digiday.jp

難しそうな話だ・・・