インスタグラム、なぜ「問題アリ」の広告掲載が続くのか?

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インスタグラム(Instagram)上に頻出する悪質広告を止める術はないようだ。

世界有数のブランドマーケターが集う団体、ブランド・イノヴェイターズ(Brand Innovators)のチーフコンテンツオフィサー、デヴィッド・タイシャー氏は5月30日、Rワード[汚い言葉]が使われたインスタグラム広告を目にし、ツイートした。

これはスマホゲーム「ハッスル・キャッスル(Hustle Castle)」の広告で、レベル1のプレーヤーはこの蔑称[retard/白痴、ノータリン、間抜け、の意]で呼ばれている。

マイ・ドットコムの広報トップ、マイケル・ファン・ダイク氏いわく、「あれはモスクワに拠点を置く弊社のユーザーアクイジションチームが行なったことで、意図的なものではない。あくまで、英語の適切な知識がなく、米市場から隔絶された状態で下した誤判断だった。不快感を与えてしまったことを陳謝するとともに、弊社のエンターテイメントアプリ用広告の選択に関し、さらなる監視の実現に向けて対策を講じていく」。

 

「インスタはインスタ」
ハッスル・キャッスルの件に留まらず、インスタグラムは白人至上主義やその他の人種差別主義を助長する商品広告を載せているとしても、激しい非難を浴びている。しかも、インスタグラムはさらに、自ら悪質広告の制作までしている。ガーディアン紙の記者が上げたレイプ予告のスクリーンショットをそのまま使用した自社広告をFacebookに載せたのだ。もちろん、すべてをアルゴリズムのせいにすることもできるわけだが……。

以下は、インスタグラムのあるスポークスマンによる弁明だ。ハッスル・キャッスルの広告は「言葉に関する弊社のポリシーに違反しており、すでに無効化されている。Facebookおよびインスタグラム上の広告は、ごく基本的レベルにおいて、弊社のコミュニティスタンダードに則ったものでなければならない。弊社の広告ポリシーはこれを大前提とし、より厳格に規定されている」。

実際、インスタグラムは悪質広告蔓延の一因となっているのだが、たいした監理も反省もしないまま活動を続けている。そして、親会社であるFacebookが危機に直面するなか、依然として、ユーザーからもマーケターからも愛されている。2018年は、前年比11%増となる80億6000万ドル(約8800億円)の広告収入が見込まれており、これはFacebookの総収入の約16.5%に当たると、市場調査会社イーマーケター(eMarketer)は予測する。

「もしもインスタグラムがテレビ番組だったら、とっくに打ち切られているに違いない」と、ある広告業界幹部は述べる。「インスタグラムが個人だったら、間違いなく、Twitterで集中攻撃を受けているだろう。しかし、インスタグラムはインスタグラムであり、それで看過されているんだ」。

「自動承認」が原因か?
インスタグラムをはじめ、インターネット上における悪質広告は決して、いまにはじまったことではない。プログラマティック広告とセルフサーブ型プラットフォームは、問題の一因だ。また、ヒューマンエラーが原因の場合もある。たとえば、ゲームアプリ「あなたなら、どっち?(Would You Rather?)」の広告に「リアーナをビンタ? それとも、クリス・ブラウンをパンチ?(Slap Rihanna or punch Chris Brown?)」の掲載を承認したのは、スナップ社(Snap Inc.)の社員だった。これを受けて、クリッシー・テイゲンといった有名人がSnapchat(スナップチャット)を去った一方、大半の広告主は同プラットフォームへの投資を続けている。同じことはインスタグラムにも言える。

周知のとおり、フェイクインフルエンサーやボットの氾濫をはじめ、インスタグラムに関する不安の種はほかにもある。だが、広告主たちは ブランドセーフティへの懸念からYouTubeを、投資に見合う見返りが期待できないとしてFacebookを、それぞれ見限った一方、インスタグラムへの投資を止めるという声は、まだ上げていない。

ハッスル・キャッスルの配信元もRワードが使われたFacebook広告を制作しており、テレグラフ紙(The Telegraph)のジェームズ・クック氏は、これをTwitterで指摘した。


Genuinely wonder if they used that term on purpose to increase Facebook interactions on the sponsored post pic.twitter.com/2uR17PMNBT

— James Cook (@JamesLiamCook) 2018年5月29日

うーん……「ノータリン(retard)」なんて言葉、普通、広告に使いたいと思うかな?
不思議でならない。このスポンサードポストへのリアクションを増やすために、あえてやっている?

クック氏のこのツイートに対し、マーケティングエージェンシー、マグネイト(Magnate)のザッカリー・ジャーヴィス氏は、「自動承認」されたのではないかと推測した。

「手動であれば、間違いなくフラグを立てられて、非承認とされる――最初の段階で自動承認されたものでは?(ただとにかく、狙いは間違いなくリアクション増だ)」と、ジャーヴィス氏はツイートしている。

Facebookの広告ポリシー
配信元の意図がいずれにせよ、インスタグラムにも適用されるFacebookの広告ポリシーは、不快な言葉の使用を禁じている。

確かに、インスタグラムも自警手段を有している。通報機能はそれで、ユーザーはわずか2回のタップで広告の資質に関する懸念を表明できるようになっている。広告に対して異を唱える第一の理由は、「私は不快に思う」から。ユーザーがこれを選択した場合、広告主側に弁明や内容追加の余地は残されていない。

こうした通報はすべてFacebookのモデレータチームが受け取る。2016年の米大統領選におけるFacebookのプラットフォームを介してのロシアによる干渉発覚を受け、同社CEOマーク・ザッカーバーグはセキュリティ強化およびコンテンツモデレーション対策として、同年末までに担当職員を2万人以上に増員すると宣言した。インスタグラムのスポークスマンによれば、広告監視専門のグローバルチームだけで1000人以上、新たに雇用しているという。Facebookはまた、悪質広告の発見および排除の一助とするべく、機械学習をはじめ、技術的ソリューションにも投資を続けている。

「牙城は簡単に崩壊する」
ニューヨーク・タイムズ紙のファハド・マンジュー氏が指摘するとおり、Facebookがインスタグラムを「次代のFacebook」にと考えているなら、インスタグラムは今後、より厳しい世間の目にさらされることになる。

Facebookは風前の灯火だが、インスタグラムは聖域とする見方がある」と、レピュテーション・マネジメント・コンサルタント・ドットコム(ReputationManagementConsultants.com)およびデジタル・マーケティング・ドットコム(DigitalMarketing.com)のCEO、エリック・シファー氏は先月、米DIGIDAYに語った。「しかし、世間の注目を集める出来事がひとつあれば、牙城は簡単に崩壊する」。

 

digiday.jp

広告あんまり気にしてなかったな・・・