体温の低い働き方説く 元2ちゃんねる管理人の新著

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ビジネス街の書店をめぐりながら、その時々のその街の売れ筋本をウオッチしていくシリーズ。今回は定点観測している街を離れて有楽町を訪れてみた。駅前の交通会館1~2階に店を構える三省堂書店有楽町店だ。定点観測している大手町、八重洲、汐留とほど近いエリアだが、客層が40代が中心といくぶん若く、新刊への反応がいいという特徴があるという。特徴的な売れ筋のひとつとして書店員があげてくれたのは、ネットの匿名掲示板「2ちゃんねる」の管理人として名をはせたひろゆき氏による働き方の本だった。

■どんな状態が相対的に有利か

 その本はひろゆき『働き方完全無双』(大和書房)。著者のひろゆき氏は「2ちゃんねる」を開設して長く管理人を務め、「ニコニコ動画」の立ち上げ、運営にも関わるなど、ネット業界の有名人だ。最近はテレビなどで政治や経済、社会問題の論客の一人として登場することも多い。そんなひろゆき氏が「これからも日本で働いていく上で、どんな状態があなたを相対的に有利にさせるか」を説いたのがこの本だ。

 ひろゆき氏が展望する日本のこれからは、とにかく明るくない。当たり前のように「沈みゆく日本」と何度も出てくるし、「競争に勝ってお金を稼げる人」と「競争に負けてお金を稼げない人」の二極化は避けられないと言い切る。だが、そこから抜け出せる「別の生き方」が存在するという。それは「個人として、ワンチャンを狙いながら幸せを目指す」生き方だという。その生き方をするための「攻め方」「守り方」を提示するのが本書の主眼だ。

■成功はたまたま、ワンチャン狙え

 成功というのは「たまたま、そこにいた」ことが大きいと著者は言う。それがワンチャンだ。自身の2ちゃんねるでの成功も「たまたま僕だけが長く続けたから」ととらえる。攻めの方では、「『新しいこと』にはとにかく首を突っ込んどけ」「てっとり早く能力以外の部分で『レア』になれ」と勇ましげな教えも提示するが、それがワンチャンを保証するわけではない。だが、相対的に有利な状況には自分を持っていけると著者は言う。

 一方、守りの方では「生活維持費の少ない場所を選んで働くという選択肢をもっておきましょう」などと、ひたすら期待値を下げ、体温を下げて働く構えを忘れるなと説く。ただ、頑張る人には思い切り頑張ってもらって、そうでない人は、それをねたむのではなく応援してあげられる社会にしようと提言する。そのために、ベーシックインカムを導入すべきだという主張もあわせて展開する。

 店頭に並んだのは12日で、そこから売れ筋上位が続いている。「新刊への反応が早いこの店らしい売れ筋。ポジティブじゃなくてシニカルなところが受けている」と、ビジネス書を担当する同店主任の岡崎史子さんは話す。

■働き方めぐる本、複数上位に

 それでは、先週のベスト5を見ておこう。

(1)家族の健康を守る家 深谷賢司著(PHP研究所
(2)「好き」と「ネット」を接続すると、あなたに「お金」が降ってくる 立花岳志著(サンマーク出版
(3)10年後の仕事図鑑 堀江貴文・落合陽一著(SBクリエイティブ
(4)宝くじで1億円当たった人の末路 鈴木信行著(日経BP社)
(5)AI vs.教科書が読めない子どもたち 新井紀子著(東洋経済新報社
三省堂書店有楽町店、2018年4月16~22日)

 1位は、医師の著者が健康と住まいの関係を自らの引っ越し経験などを基に考えた一冊。2位の本は、「好きなこと」を仕事にできるブログとソーシャルネットワークサービス(SNS)の使いこなし方を伝授する内容だ。4位は、2017年3月刊行だが、ドラマ化され、この23日に放送が始まった。店員みんながこの本をあしらったTシャツを着るキャンペーンを展開中だった。

 3位は前々回に紹介した2人の人気著者が働き方を論じた本。今回紹介した本と通じる部分がある。働き方をめぐっては、多くの論者が日本の未来図と合わせて語り、会社に使われるのではなく自分中心に働くことを提唱する本が多い。5位は2月刊行の話題の本。こちらも発売から間もない3月初めに、本欄で紹介した(「AIに代替される人材とは 研究者が憂慮する未来図」)。やはり将来の日本人の働き方に関わる内容で、働くことの現在と未来からビジネス書は目を離せない。

 

引用元

style.nikkei.com

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