女性用エステサロンで増す「男性施術師」の存在感

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肌の手入れやリンパマッサージ、痩身など、美しくなるための施術をする、エステティシャン。ここ最近、男性のプロフェッショナルが目立つようになった。すっぴんも、素肌もさらすエステ。女性の客にとって、男性エステティシャンは抵抗があるのでは? そんな予想に反して、いま男性エステティシャンが人気を集めているという。

男性エステティシャンが増えていると聞いて、早速試しに。あられもない姿をさらすのが恥ずかしく、帰りたいと思っていたところに、すらりとした体型の男性が現れた。事前に記入したアンケートを見つめ、驚いた表情を浮かべながら、軽やかに突っ込みを入れる。

「えっ、血行が悪くて、やる気が出ない? ライターさんなのに、だめじゃないですか」。その後、肩こりなどの症状をいろいろ訴え、聞いてもらう。男性エステティシャンの話しやすい雰囲気に、しだいに心もほぐれていく。

顧客には「1度受けてみて」と勧める
東京と仙台に3店舗展開するエステサロン「青の家」が、男性エステティシャンを雇うようになったのは、7年ほど前だという。同サロンを運営するブルーハウスの代表の金澤彰子氏は、自身が強めのマッサージを好むことから、「深層リンパを刺激する」とうたった、エステサロンを立ち上げた。このサロンならではの特色を印象づける狙いもあり、男性エステティシャンを雇い入れることにしたのだ。

「女性のお客様の半分以上が、男性エステティシャンはイヤと言う。そこをあえて、『1度受けてみて』とすすめている。1度経験した人からの男性NGはほぼなく、リピーターになる方も多い」と金澤氏は話す。現在、各店舗7人前後のエステティシャンのうち、2~3人ずつ男性エステティシャンを置いているという。

まだ日本では異色の存在を放つ、男性エステティシャンは、その数を正確に把握するのが難しい。エステティシャンの国家資格はなく、民間資格があるのみだが、資格を持たずに施術をおこなう人も多いからだ。

サロンで勤務する「従業員」だけではなく、個人で開業するケースも多く、「エステティシャンとして働いている人の実態数、男女比の公式データはない」(日本エステティシャン協会)が、日本で最近、「男性の数は増えてきた」(同)という。ただ、そもそも、女性と同様、昔から存在していたという。欧州でも男性エステティシャンは多く、世界でみると「決して特別ではない」と指摘する。

日本で男性エステティシャンが増加した背景は、同協会によると、1つは、エステティシャン養成校が男性を受け入れるようになったこと、もう1つは、男性の美容意識が高まったことがある。

リーマンショックも引き金に
2008年のリーマンショックが転機になったとの見方もある。直後の景気後退のあおりを受け、大手のエステティックチェーンや養成学校が相次いで経営破綻。養成校はかつて、生徒が互いに練習台になることから、男性の受け入れを認めていなかったが、受講生が減り、男性にも門戸を開くようになったのだ。

エステサロンが価格破壊に見舞われていることも一因」と指摘するのは、金澤氏だ。マンションの一室で気軽に起業できるエステサロンは、リーマンショック前は開業も相次いだが、リーマンショック後は開業を上回る数の店舗が閉鎖に見舞われたといわれる。かつては高額なイメージもあったエステだが、顧客獲得のための値引き合戦が広まった。

「価格破壊が起こったことにより、女性のエステティシャンにとっては労働時間や体力面など、ハードになり、女性の業界離れが進んだ」(金澤氏)

ここ数年は景気も回復基調でエステ需要も高まったが、サロンは人材不足。そこに、かつてはまれだった男性エステティシャンの姿が目立つようになった。

都内でエステサロン「クレードル」を経営する、エステティシャンの土岐忠さんはこう説明する。「男性向けエステサロンも増え、『エステティシャンの仕事も面白そう』と思う人が出てきた。10年前だったら、そういう人も学ぶ機会がなかったけれど、今は学校もあり、プロを目指すことができる」。

 

自身は、22歳で初めて受けたマッサージの体験が強烈だったことから、この道を志した。無気力だった日々が、マッサージを機に心身にエネルギーがみなぎり、そのまま施術してくれた先生に弟子入りした。

養成校の短期講座を受けたり、実習をこなしたりして、プロに。その後、女性のセラピストから、オイルマッサージについて学び、奥深さに開眼した。さらに学ぶため、エステサロンでの勤務をしながら、アロママッサージやフェーシャル、スポーツマッサージ、痩身、ダイエットなど、技術や知識の分野を広げていった。

女性客が男性施術師に期待していること
「女性のエステティシャンの層は厚く、技術のレベルも相当高い。加えて、男性エステティシャンはサロンへの就職がまだ狭き門。さまざまなニーズに対応できることを強みにしたかった」(土岐氏)。

「青の家」の金澤氏も、「男性エステティシャンを受け入れるサロンがまだ少ないので、ここでは男性も採用すると聞き、応募する志望者も増えている」と話す。「男性エステティシャンはおすすめだが、現時点では女性の比重が高い。せっかくの有望な男性の応募を断らなければいけないことが多い」(同氏)

土岐氏は8年前にサロンをオープンし、当時は珍しかったため、男性エステティシャンとして、メディアへの露出も増えた。それに伴い、男性エステティシャンから、集客についての相談を受けることも多くなった。

「男性エステティシャンに求められていることを誤解している人が多い。『女性ホルモンが活性化される』といううたい文句を出している人があまりにも多い。これでは逆に女性が引いてしまう」

エステサロンを訪れる女性にとって、男性に期待しているのは、「性的なサービス」ではない。「わざわざ少数派として美容業界で働く男性に求められているのは、オタク気質の深い専門知識。実際、何でも詳しいと思われて、コスメの質問まで受ける」と土岐氏は話す。

男性ならではの視点やマニアックさも、アドバイスにしのばせる。たとえば、どう見ても細身なのにさらに「やせたい」という女性に対して、「モデル体型になりたい」という本人の意向も酌みつつ、「男性から見ると、魅力的な体形はこうですよ」と男女の視点のバランスをとる。

さらに、「やせなくとも、引き締まってみせる方法もありますよ」と、食事、エクササイズ、肌の手入れ法などを紹介するなど、ややマニアックなほどに深く知識を蓄え、対応できる範囲を広げておく。

女性とは違うコミュニケーション力

土岐氏は、「自分自身の見栄え」にも気をつけている。「体形を普通サイズに保っている。体が大きいと安定感が増すけれど、大きくなりすぎると痩身アドバイスの説得力がなくなる。筋肉がつきすぎると、威圧感を与えてしまう。逆に細くなりすぎると、痩身を目的としたお客様が敵愾心(てきがいしん)を持ってしまうおそれもある(笑)」。

清潔感があり、中性的なやわらかい雰囲気を持つ男性エステティシャンを積極採用しているという「青の家」の金澤氏も、「男性エステティシャンに注目すべきは『匠(たくみ)』ともいえる、職人気質」という。

「男性エステティシャンの応募は多いが、そもそも、生理、ホルモン、むくみ、冷えといった女性特有の体の仕組みなど、学ぶことが女性より多い。女性の職場環境で厳しいことを言われたり、女性のお客様からのときに気まぐれな反応に傷ついたり、3カ月ぐらいで『こんなはずではなかった』と辞める人がいるほどハードルの高い環境。それを乗り越えた男性エステティシャンは、コツコツと技術やコミュニケーション力を高め、プロ中のプロになっている」

今回、体験やインタビュー取材を通して一番驚いたのは、男性エステティシャンたちの絶妙なコミュニケーションの間合いだった。異性を感じさせない物腰のやわらかさ、知り合いのような気さくさ、会話のテンポのよさで、こちらもすっかりリラックスして本音トークができた。女性客が心地よさをおぼえるツボを、コミュニケーションでもおさえている。

エステティシャンの真のやりがいは、「お客様と二人三脚で、体質を改善し、生活の質を向上させるサポートをしていくこと」と話す金澤さん。少数派である、男性エステティシャンならではの技術や人間力を磨くたゆまぬ努力が、人気の秘密なのだろう。

 

引用元

news.livedoor.com

 

男性だからこその良さがあるのかもしれないですね。